
アルトラのフラッグシップモデル「ローンピーク」が7から8へとアップデートされました。ハイカーやトレイルランナーに愛され続けているこのシューズ、実は世代ごとに結構個性が違うんです。
今回はローンピーク7と、新しい8との比較から見えてきた違いについて、詳しくお話ししていきますね。「買い替えるべき?」「初めて買うならどっち?」「登山に向いてるのはどっち?」そんな疑問にもお答えします!
まず結論から:8は7の完成度を継承した順当進化
最初にお伝えしておくと、ローンピーク8は7からの大幅な変更ではなく、マイナーチェンジ程度のアップデートです。7の完成度がかなり高かったので、細かい部分を丁寧に改良したという感じですね。
でも、この「細かい改良」が実は長距離で使うと結構効いてくるんです。特にアッパーの耐久性向上とフィッティングの改善は、500km、1000kmと使い込んでいく中で確実に違いを感じられる部分だと思います。
基本スペックは変わらず、サイズ感も同じ
まず安心していただきたいのが、サイズ感は7と8で全く同じということ。ラスト(足型)に変更はないので、7で26.5cmを履いていた人は8でも26.5cmで大丈夫です。
アルトラの推奨では、つま先から1.2cm(指の爪1つ分くらい)の余裕を持つのがベスト。これは歩いたり走ったりする時にシューズが屈曲して収縮するから、その分を見込んでのことなんですね。
私の場合、足の実寸が26.0cmで標準的な足の厚みなんですが、26.5cmでちょうど良い感じ。アルトラの中でもローンピークはオリジナルフットシェイプという一番ゆとりのある足型を使ってるので、足のボリュームがそれほどない人は実寸+0.5cmでもいけることが多いです。
重量については、メーカー発表では8の方が約10g軽くなってるんですが、実際に測ってみると6g程度の差でした。これは個体差もありそうですが、履いてみると確かに8の方が軽く感じます。
最大の変更点:アッパー素材の大幅改良
7と8の一番大きな違いは、間違いなくアッパー素材の変更です。これは見た目にも分かるし、履き心地にも影響してくる重要なポイントなんです。
ローンピーク7のアッパー特徴
7は少し柔らかめのダイヤモンドリップストップメッシュを使っていました。グリッド状に補強が入っていて、確かに丈夫だったんですが、密度が高いせいかちょっと蒸れやすかったんですよね。
通気性は悪くないんですが、夏場の長時間使用や、汗をかきやすい人にはやや気になる部分でした。でも耐久性は抜群で、500km以上使ってもアッパーに穴が開くことはありませんでした。
ローンピーク8の改良されたアッパー
8では格子状のリップストップメッシュに変更。6と見た目は似たような縦横のリップストップになったんですが、少しハリコシがある素材になりました。
履き比べてみると、8の方がアッパーの伸縮性が若干抑えられていて、より「かっちり」した履き心地になっています。これが好みの分かれるところで、6以前の柔らかい履き心地が好きだった人には、やや硬く感じるかもしれません。
ただし、通気性は改善されているように感じます。7で感じていた蒸れがかなり軽減されていて、これは嬉しい変更点ですね。
フィッティング調整がより細かく可能に
地味だけど重要な改良がシューレースホール(アイレット)の変更です。
7では縦穴のみだったのが、8では中足部に横穴が追加されました。これによって甲周りのフィッティングがより細かく調整できるようになったんです。
特に足の甲が低い人や、足型が薄めの人には朗報。今まで「アルトラは自分の足には大きすぎるかも…」と感じていた人でも、8なら横穴を使うことでしっかりとフィットさせることができます。
私も実際に試してみましたが、確かに中足部の締め付け具合をより自分好みに調整できるのは便利です。長距離を歩く時って、足のむくみ具合も変わってくるので、こういう細かい調整ができるのはありがたいですね。
インソールの材質変更でレスポンスアップ
見落としがちだけど、実は結構大きな変更がインソールの材質変更です。
ローンピーク7のインソール
7は低反発系の柔らかいインソールを使っていました。スポンジのような素材で、足当たりは優しいんですが、水を吸うと重くなりがちでした。
蒸れ足の私としては、特に夏場や雨上がりのトレイルで重さを感じることがあったんです。
ローンピーク8のインソール改良
8では少しコシのある、高反発系のインソールに変更。レスポンスが良くなって、蹴り出しの時にしっかりと反発を感じられます。
個人的にはこちらの方が好印象。テンポよく歩いたり走ったりする時に、インソールからの反発があると疲れにくいんですよね。
それに保水性も低くなったので、雨の日や汗をかいた後でも重くなりにくいのは大きなメリット。重量差は片足あたり2g程度ですが、これは個体差の範囲かもしれません。
細部のデザイン変更も見逃せない
パッと見では分からないような細かい部分にも、実は改良が加えられています。
溶着パーツの位置や形状が微妙に変わっていたり、ロゴやストラップ部分に等高線のようなデザインが入ったり。これらは機能面での大きな違いはないですが、全体的な質感向上に貢献していますね。
ヒール部分についても、クッションの量が若干抑えられてより細身になったような印象です。私は踵が比較的細い方で、他のシューズだとフィッティングで困ることが多いんですが、ローンピークは7も8も問題なし。むしろアルトラのトレイルシューズの中で一番踵のフィットが良いと感じています。
従来のトレッキングブーツとの比較
登山を始めたばかりの人だと「ローンピークって登山靴として本当に大丈夫?」と思うかもしれません。従来のがっしりしたトレッキングブーツと比較してみましょう。
重量の違いが生む疲労軽減効果
一般的な本格トレッキングブーツは片足600-800g程度。対してローンピークは272g(8の場合)と、約半分の重さです。
「足首の重り1gは背中の重り5gに相当する」と言われていて、実際に長時間歩くとこの軽さの恩恵を強く感じます。特に下りでの足の運びやすさは段違いですね。
サポート性能の違い
従来のトレッキングブーツの特徴:
- 足首をがっちりサポート
- 重い荷物でも安定性抜群
- 岩場での保護性能が高い
- 長期間使える耐久性
ローンピークの特徴:
- 足首の自由度が高く自然な歩行
- 軽量で疲労しにくい
- 足本来の機能を活かした歩き方
- 足裏感覚に優れる
実は、現在の登山界では「足首の過度なサポートは、足本来の筋力を弱める」という考え方も主流になってきています。ローンピークのようなローカットシューズは、足の筋力を活かしながら山を歩けるんです。
適用範囲の使い分け
結論として、どちらも一長一短。使い分けが大切です。
ローンピークが有利な場面:
- 一般登山道での日帰りハイキング
- 軽量化を重視した縦走
- トレイルランニング要素のある山行
- 足腰の負担を軽減したい場合
従来ブーツが有利な場面:
- 重荷物でのテント泊縦走
- 岩場中心のルート
- 悪天候下での安全性重視
- 足首に不安がある場合
登山での使用感:日本の山での実力は?
改良点ばかり話してきましたが、7で高く評価されていた部分はしっかりと8にも引き継がれています。
MaxTrac™アウトソールの優秀な防滑性
7で大幅に改良されたMaxTrac™アウトソールは、8でも同じものが使われています。このアウトソール、本当に優秀なんです。
4mm弱のラグパターンで、登りでも下りでもよく食いつく。コンパウンドも改良されていて、「ローンピークは滑る」なんて声を昔は聞いたこともありましたが、7以降のこのソールは本当に信頼できます。
実際、去年の比叡山のレースでは後半かなりの雨だったんですが、濡れた下りのアスファルト(コケも生えてる!)でも全く不安なく走れました。個人的にはビブラムのメガグリップと比べても引けを取らない、7〜8点の防滑性があると思います。
Altra EGO™ foamの絶妙なバランス
ローンピークの最大の魅力とも言えるのが、このAltra EGO™ foamを使ったミッドソールです。スタックハイト25mmという絶妙な厚さが本当に素晴らしい。
「足裏の感覚は損なわず」「レスポンスが良く」「柔らかく弾性もある」。まるで自分の足の裏に質の良い筋肉を纏ったかのような履き心地なんです。
素足で走っているような軽やかさがあるのに、路面の凹凸による強い突き上げはカット。長時間使っても足裏の疲労感が少ないんです。この感覚、一度味わうとやみつきになりますよ。
実際、600km以上使い込んだ私の7を見ても、ミッドソールのへたりは驚くほど少ないです。アウトソールのラグはさすがに減ってきましたが、ミッドソールの耐久性も大きな魅力の一つですね。
実使用で分かった7と8の使い分け
実際に両方を履き比べてみて感じた、それぞれの特徴をまとめてみます。
ローンピーク7がおすすめな人
- 柔らかい履き心地を重視する人:6以前の柔らかさに近い感覚を求める人
- コストを抑えたい人:7はセール対象になっていることが多い
- 短距離メインの人:アッパー耐久性の違いが出にくい使い方
ローンピーク8がおすすめな人
- 長距離・長期間使用する人:アッパー耐久性の向上が効いてくる
- フィッティングにこだわりたい人:横穴アイレットでより細かい調整が可能
- ウェット環境での使用が多い人:インソールの改良で重量増加を抑制
- レスポンシブな履き心地が好きな人:インソールとアッパーの改良で、よりキビキビした感覚
長距離ハイカーからの圧倒的支持
私がローンピークを1年間、600-700kmにわたって使用した中で一番驚いたのは、トラブルの少なさです。
この靴を履いて捻挫したことは一度もないし、ひどいマメや靴擦れに見舞われたこともありません。過去にはいろんなシューズで腰や膝を痛めたり、腸脛靭帯炎になったこともあったんですが、ローンピークではそういったトラブルが皆無でした。
これはゼロドロップ(踵とつま先の高低差がない)設計の恩恵が大きいと思います。踵部の摩耗を見ても、ヒールストライクが自然に抑制されているのがよく分かります。
昨年のPCTスルーハイカーの方にお話を聞いたところ、「いくつかシューズを試したけど、ローンピークが一番トラブルが少なかった」とおっしゃっていました。こういう口コミでの信頼感が、12年間愛され続けている理由なんでしょうね。
登山スタイル別おすすめ度
日帰りハイキング:★★★★★ 軽快さと快適性で最高の選択。疲労軽減効果も抜群。
山小屋泊縦走:★★★★☆ 荷物がそれほど重くない縦走なら最適。快適性重視の人にはベストチョイス。
テント泊縦走:★★★★☆ 重荷物でもその軽快さは魅力。ただし岩場の多いルートでは慎重に。
沢登り・岩場メイン:★★☆☆☆ 専用靴には劣る。補助的な使用に留めた方が安全。
雪山登山:★★☆☆☆ 軽アイゼンまでの使用に限定。本格的な雪山では専用ブーツを。
耐久性について正直なところ
気になる耐久性について、正直な感想をお伝えします。
アウトソールの摩耗
MaxTrac™ラバーは確かに優秀ですが、グリップ性能との引き換えで摩耗は早めです。ただし、「トレイル上でラグが十分な防滑性能を保つ」ことを前提に考えると、500km以上は持ちます。
私の使用環境(主にトレイルだが、レースやトレーニングでロードも結構走る)を考えると、十分な耐久性だと感じています。
アッパーと接着部分
7では500km以上使用してもアッパーに穴が開くことはありませんでした。以前のモデルで問題だった「つま先部分の剥がれ」も全く起きず、疲れて足が上がらずにつま先をひっかけることが多々あったんですが、大丈夫でした。
8でも基本的には同様の耐久性が期待できそうですが、アッパー素材が若干変わったので、長期使用での変化は今後注目していきたいところです。
買い替えのタイミングは?
現在ローンピーク7を使っている人で、8への買い替えを検討すべきケースをまとめてみました。
買い替えを検討すべき人
- 現在の7を500km以上使用している:そろそろ寿命なので、8への更新タイミング
- アッパー耐久性に不満がある:8の改良されたアッパーでより長持ちが期待できる
- フィッティングに課題を感じている:横穴アイレットでより細かい調整が可能
- 蒸れが気になっている:アッパーとインソールの改良で改善が期待できる
7のままでも十分な人
- 現在の履き心地に満足している:大きな変更ではないので急いで変える必要なし
- 主に短距離での使用:耐久性の違いが出にくい使い方
- 予算を抑えたい:7のセール品を狙うのも良い選択
まとめ:どちらを選んでも間違いなし
ローンピーク8は7の高い完成度を継承しつつ、長距離使用で効いてくる細部の改良を加えたモデルです。大革命ではないですが、確実に進歩していることを感じられる、丁寧なアップデートと言えるでしょう。
初めてローンピークを購入するなら、最新の8を選んでおけば間違いありません。改良点はどれも使用期間が長くなるほど恩恵を感じられるものばかりです。
現在7を愛用している人も、使用距離や用途に応じて買い替えを検討してみてください。ただし、7も十分に完成されたシューズなので、無理に買い替える必要はないというのが正直なところです。
何より、どちらを選んでも「トラブルから解放される冒険」というアルトラのコンセプトを体現する、信頼性の高いシューズであることに変わりはありません。

ローンピークの魅力を一度味わってしまうと、もう他のシューズには戻れないかもしれませんよ。ハイキングやトレイルランニングがより楽しく、より安全になること間違いなしです!
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